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車両に細川夏取締役の絵 新聞記事「物流ニッポン」2024.09.24掲載

 三次貨物運送(広島県三次市)は,細川喜一郎社長の三女,細川夏取締役が描いた犬や猫,モモンガの絵をシールにして自社トラックに貼っており,ドライバーから好評だ。細川社長は「ドライバーは車両を大切にするようになり,モチベーションも上がっている。トラックのデザインは大事。これからも描いてほしい」と目を細める。

 細川取締役は,広島市立大学芸術学部で漆造形を専攻。広島出身の漆芸家,七代金城一国斎氏に師事し,漆塗りを基礎から学んだ。小さな頃から絵を描くのも好きで,三次高校では美術部の副部長を務め,地元ショッピングセンターの駐車場スロープに壁画を描いたこともある。

 広島市立大卒業後は,美術に関わる活動をしてきたが,2023年3月に三次貨物運送へ入社。叔母の細川アサエ取締役の補佐として様々な業務に従事し,今年8月には運行管理者試験にも挑戦した。

 夏氏「運送はこれまでとは畑違いな世界だ。未経験なことばかりだが,会社の人はほとんど昔から知っており,親切に教えてくれる。今後は運送事業に詳しくなれるよう,専門用語も含めて勉強したい」と話す。

 トラックに貼っている絵は4作品で,実際に飼ったことのある犬や猫,モモンガが題材。最初の作品は犬と猫の後ろ姿のツーショットで,写真を見ながらタブレット(多機能携帯端末)でリアルに描いた。犬は引っ越しで飼えなくなった社員から引き取ったミックス(雑種)犬で,会社で23年の生涯を終えた。

 夏氏は「実物より少し大げさに描くと,良い感じに仕上がる。良い感じに仕上がる。クレーン車の乗務員からはリクエストも来ており,要望に応えて色んな絵を描きたい」と述べ,5作品目を製作中だ。

 細川社長は「写真だけを見て実物そっくりに描く腕に感心する。印刷会社にシール作成を依頼した際,『著作権は大丈夫ですか』と聞かれたほど。また,ドライバーは荷主から数回,『写真を撮らせてほしい』と頼まれた。時間があれば,ペットの肖像画などを有料で描いてみるのもいいのではいか」と語る。

 三次貨物運送は,細川社長の祖父が馬車引きから始めた老舗。広島県北部を代表する運送会社の一つで,夏氏も将来の事業継承が視野に入る。

 細川社長は,「娘の入社で職場が明るくなった。同世代の社員が増えればもっと活性化するのではないか。また,物流業界には女性の経営者やドライバーが増えており,好きなイラストやデザインを入れ,やる気を起こさせてくれる車両にしてくれたらいい」と期待する。(江藤和博)